先日、60代のお客様とファッションについてお話ししていた際に、「若いのに、いろいろなことを知っていてすごいね」と言っていただく機会がありました。
僕自身、もともと古いものが好きで、ファッションも車も、昔のデザインに魅力を感じることが多くあります。
ただ、美容師として過去のデザインや歴史を学ぶことには、趣味とは別の理由があります。
それは、基本と歴史を理解することが、さまざまなヘアデザインに対応するための大切な土台になると考えているからです。
流行を知り、歴史を学ぶ
ファッションやヘアスタイルの流行は、時代とともに繰り返されます。
もちろん、まったく同じ形で戻ってくるわけではなく、その時代に合わせて、シルエットや質感、全体のバランスが少しずつ変化していきます。
美容業界では、年齢を重ねても若い世代のトレンドを学び続けることが大切だと言われます。
それは重要なことです。
ただ、現在31歳の僕にとって、現代の流行は日常生活やSNS、自分より若い世代の方々との交流を通して、自然と目に入ってくるものでもあります。
一方で、過去のデザインや技術は、自ら興味を持って学ばなければ、なかなか触れる機会がありません。
自分より上の世代の方々の流行やデザインを学ぶことも、同じように大切だと思っています。
同じ名前でも、時代によって異なるヘアデザイン
例えば、ウルフカット。
僕が日本に帰国した頃、ウルフカットが非常に流行していました。
当時、他店でウルフカットをお願いしたものの、思っていた仕上がりと違ったという若いお客様が、僕のところに相談に来られることがありました。
実際に拝見すると、当時流行していたウルフカットというより、ひと昔前のウルフカットに近いバランスになっていることもありました。
以前のウルフカットは、トップを短く切り込み、段差を強調したメリハリのあるシルエットが特徴的でした。
一方、近年流行したウルフカットは、比較的低い位置にウェイトを設定し、表面の長さを残しながら、質感や毛先の動きで表現するものも多く見られます。
ただ、これはどちらが優れているという話ではありません。
人は、若い頃に親しんだファッションや音楽に、今でも魅力を感じる方々が多くおられる一方で、若い世代が昔のデザインを好んだり、年齢を重ねた方が最新のトレンドを楽しんだりすることもあります。
僕自身、今でも古い車に乗ったり、1980年代のYohji Yamamotoの服を着たりしています。
年齢だけを基準に「30代前半だから最新のトレンドを」と提案されても、僕自身の好みとは必ずしも一致しません。
大切なのは、それぞれの違いを理解し、お客様が求めているデザインを正確に捉えることだと思います。
完璧なカット技術を持っていても、目指すゴールを間違えば、そのカット技術も水の泡です。
世代や地域によって異なる美しさ
美的感覚の違いは、世代だけでなく、国や地域によっても見られます。
僕はロンドンで美容師として活動してきましたが、日本と欧米では、好まれるヘアデザインや髪質に対する考え方が異なると感じる場面がありました。
実際に、日本人のお客様が欧米で髪を切ってイメージと違う仕上がりになったり、反対に欧米のお客様が日本で同じような経験をされたりする話を聞くことがあります。
髪の硬さや太さ、骨格、色による見え方、そして文化によるイメージ、いいと思うデザインの違いなど、さまざまな要素が関係していると思います。
10代から90代まで。LOWONIDAが大切にしていること
ありがたいことにLOWONIDAには、現在10代から90代まで、幅広い世代のお客様にお越しいただいています。
日本人のお客様はもちろん、欧米やその他のアジアの国々のお客様にもご来店いただいており、中には親子4代で通っていただいているご家族もいらっしゃいます。
これまで学んできた技術や、さまざまな時代・地域のヘアデザインへの理解も、今のサロンにつながっているのではないかと感じています。
流行を取り入れたい方も、昔のデザインが好きな方も、人とは少し違うスタイルを楽しみたい方も。
それぞれのお客様に、ヘアデザインを楽しんでいただきたいと思っています。
ヘアデザインの枠を越えて
最近は、建物や空間のデザインについて考える機会もあり、安藤忠雄さんをはじめ、さまざまな建築に触れるようにしています。
また、ヨーロッパで出会ったジュエリーデザイナーの友人とは、お互いのアイデアを出し合いながらジュエリーをデザインしたり、街を歩いてさまざまな建築を眺めながらサロンのデザインについて話したり、時には車のカスタムについて語り合うこともあります。
ファッション、ジュエリー、建築、車。
分野は違っても、そこには形やバランス、素材、時代背景など、デザインを考える上で共通するものがあると感じています。
美容師として技術を磨くことはもちろん、さまざまな美しいものや面白いものに触れ、自分自身の感覚も磨き続けたい。
そして、LOWONIDAだからこそ生まれるデザインを、これからも一人ひとりのお客様に届けていきたいと思っています。

