「お任せで」という方にも、僕がいろいろと聞く理由

先日、ご新規のお客様をカウンセリングしている時に、こんなことを言われました。
「私は正直そんなにこだわりもないし、分からないので、適当にやってもらって大丈夫です。」

その方は今まで、カウンセリングで美容師さんとそこまで細かくお話することはなく、だいたい同じようなショートボブにされることが多かったそうです
僕がいろいろと質問するので、「そんなに聞かれても分からない」という感覚だったのだと思います。

ただ、そこから話をしていくと、
「仕事の時には髪をくくりたい」「美容室では良くても、自分ですると広がって上手くいかない」
など、少しずつ条件や悩みが出てきました。

これは決して「実はこだわりが強かった」という話ではありません。
お客様自身は、本当に髪型へのこだわりはそれほどないと思っているのだと思います。

そして今回、このやり取りをしながら、改めて「お任せ」について考えました。

目次

「お任せ」の意味は、人によって全く違う

僕のお客様の中には、本当の意味で完全にお任せしてくださる方もいます。
その中でも特に印象に残っている方がいます。

その方は癖毛で、毛量も多いため、それまでどこの美容室へ行っても肩より上には切ってもらえなかったそうです。

最初のカウンセリングで、
「短くしてみたいです。どれだけ短くなっても大丈夫です。新しいスタイリングが必要なら同じスタイリング剤を買って、自分でもできるように努力します。」

そして、
「田中さんが全力で私に似合うと思ってやってくれたなら、どんな髪型でも文句を言わないのでやってください。」
と言っていただきました。

話していて、これは本当にそう思って言ってくださっているんだなと感じました。
なので僕が最適だと思うヘアスタイルとして、耳も見えるくらいのかなり短いショートまで切り込みました。

癖を無理に伸ばすのではなく、濡れた状態からムースを使って仕上げられるヘアスタイルを提案しました。

結果として「初めてこんなに短くできた」と、とても喜んでいただき、その後も何度も来ていただいて、現在もショートを続けています。
こういう「お任せ」であれば、僕からもどんどん新しい提案ができます。

でも、僕のこれまでの経験では「お任せで」「私には分からないので」と言われる方のほとんどにも、何かしら希望や条件があります。

髪型へのこだわりがなくても、生活には条件がある

例えば、
仕事では髪をくくりたい。
朝はほとんどスタイリングする時間がない。
アイロンは使いたくない。
スタイリング剤が苦手。

逆に、毎朝しっかりアイロンを使う。
多少手間がかかっても、デザインを優先したい。

これらもすべて、僕にとってはヘアスタイルを考えるための大切な情報です。

骨格や髪質、生え癖を見て「似合う髪型」を考えることは、もちろん美容師として大切です。
でも、それだけでその人にとって良いヘアスタイルになるとは限りません。

その人がその髪型で、毎日どう生活するのか。
僕はそこまで含めて考える必要があると思っています。

「毎日70点」が良い人もいれば、「必要な日に100点」が良い人もいる

長く美容師をしていると、本当にいろいろな生活スタイルの方に出会います。

例えば、普段の髪はボサボサでも気にならない。
簡単にまとめたりして過ごして、週末や特別な予定がある時には美容室へ行ってスタイリングしてもらい、その日は100点にしたい。

そんな方もいます。

ロンドンで仕事をしていた頃は、ヘアスタイルだけでなくファッションにも、このような考え方をする方が多かった印象があります。
普段はTシャツやデニムなどラフな服装で過ごしていても、週末のパーティーや特別な外出では一流デザイナーのドレスを着て、髪も美容室で完璧に仕上げる

もちろん全員がそうではありませんが、そんなメリハリのある文化を感じることは多くありました。

反対に日本では、特別な日に100点を作ること以上に、
毎日、自分で無理なく70点くらいを維持したい。
という方が多いように感じます。

仕事に行く日も、買い物に行く日も、自分である程度綺麗にしていたい。

様々な国の方々のヘアスタイルを任せていただく中で、そんな違いを感じることがあります。

さらに、僕がこれまで出会った中には、
「自分ではスタイリングどころかシャンプーもしません。毎朝美容室へ行って、シャンプーとブロー、スタイリングまでしてもらいます。」
という生活をしている方もいました。

そこまでいけば、美容師側が提案できるヘアスタイルの幅は大きく変わります。

ただ、そのような方々は、カットやカラーなども含めると、日本の物価でも月に30万円以上、イギリスでは60万円以上を美容室に使うような層の方々の話です。
当然、多くの方が同じ生活をできるわけではありません。

例えば、お客様が持ってきた写真のヘアスタイルを再現するために、毎朝かなり高度なアイロン操作が必要だったとします。
毎朝美容室へ来てスタイリングするのであれば、僕はそれを前提にデザインできます。

でも、普段は乾かすだけの方なら話は違います。

同じ写真を見て、同じ人に似合うと思ったとしても、生活スタイルが違えば僕の提案も変わります。

だから、初めての方には特にいろいろ聞きます

長く担当させていただいているお客様なら、
「この方はここまでは大丈夫」
「これは嫌い」
「朝はこれくらいスタイリングしてくれる」
「このくらいの変化なら楽しんでくれる」
ということが少しずつ分かってきます。

その情報が積み重なっていけば、その方の好みや生活から大きく外すことなく、こちらから提案することもできます。

でも、初めてお会いした方や、まだ数回しか担当していない方のことを、僕はまだそこまで知りません。

そこでいきなり、
「何も分からないので、全部お任せします。」
と言われても、その「お任せ」がどこまでなのかは分かりません。

短くなってもいいのか。
結べなくなってもいいのか。
今までと違うスタイリング方法になってもいいのか。
毎朝どれくらい髪に時間を使えるのか。
絶対に嫌なことは何なのか。

僕がいろいろと質問するのは、希望するヘアスタイルをお客様自身に決めてもらいたいからではありません。
むしろ、ヘアスタイルそのものは分からなくても大丈夫です。

その代わり、ご自身の生活や、好きなこと、嫌なことは教えてほしい。
それが分かれば、その条件の中で似合うヘアスタイルを考えることは美容師の仕事です。

「お任せ」は、何も話さなくていいという意味ではない

「自分に何が似合うのか分からない」
「髪型にそれほどこだわりがない」
「プロに任せたい」

そう思って美容室へ来ていただくことは、僕は全く問題ないと思っています。
むしろ、そこから提案することも美容師の仕事だと思います。

ただ、人によって生活も違えば、髪にかけられる時間も違います。

毎日70点でいたい人。
普段は30点でも、必要な日に100点になりたい人。
100点を維持するためなら、毎日美容室へ行く人。

どれが正解ということではありません。
だからこそ、まずその人のことを知らないと始まらない。

骨格や髪質を見ることと同じくらい、その人がどんな生活をして、髪とどう付き合っているのかを知ることも、ヘアスタイルを作る上で大切だと思っています。

わざわざ美容室を変えて来てくださったからこそ

LOWONIDAには、引っ越しをきっかけに新しい美容室を探して来てくださる方や、以前担当していた美容師さんの引っ越しや引退をきっかけに来てくださる方もいらっしゃいます。

一方で、大半の方は姫路を中心に関西エリアに以前から住んでいて、これまで通っていた美容室も変わらず営業している中で、LOWONIDAを選んで来てくださいます。

美容室を変えるということには、何かしら理由があると思っています。

もっとこうなりたい。
今までできなかったヘアスタイルに挑戦してみたい。
日々の扱いにくさを解消したい。
あるいは、自分でもはっきりとは分からないけれど、何かを変えたい。

理由は人それぞれだと思います。
だから僕は、わざわざLOWONIDAを選んで来てくださった方には、何か叶えたいことや、解消したい悩みがあると思って接しています。

最初はいろいろと質問するかもしれません。
でも、ヘアスタイルの正解を答えていただく必要はありません。

「普段どうしているのか」
「何ならできるのか」
「何はしたくないのか」
「これからどうなりたいのか」

そんなことを教えていただければ、そこから先のヘアスタイルを考えるのは、僕たち美容師の仕事です。

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